■施設の規模 敷地面積2.706.47m2 延床面積1.619.93m2
■建築構造 鉄筋コンクリ−ト2階建
■施  工 前田建設工業株式会社
■入所定員 介護老人福祉施設・・・60名 短期入所生活介護・・・ 3名

−建築評論家 松葉一清・朝日新聞学芸部より−
東大和市に開設された「向台老人ホ−ム」を見て、驚きの声をあげぬ人はまずいないだろう
ガウディを思わせる彫刻を全身にまとった建築は、それまでの「擬似病院」的な老人ホ−ム
とはかけ離れているからだ。恐らく入所する老人にとっては「最後の家・終いの棲家」となる
であろう建物が、それこそ極楽めかした装飾三昧に仕立て上げられているのだ。
このホ−ムのメインスペ−スは、何と言っても霊安室だ。老人ホ−ムで最も配置が難しいの
は霊安室であるとよく言われる。霊安室を老人の居室棟に配置すると、その隣室を割り当て
られた老人たちに動揺を与えるからだ。このため霊安室は、どんどん隅っこに追いやられて
時にはゴミ出しの勝手口や地下の駐車場に計画されたりする。梵は「老人は粗大ゴミではな
い」と嘆く。そこで彼は、思い切って霊安室を正面玄関脇に据えたのである。その仕立てもカ
タコンベを思わせるような塗壁とフレスコ画の礼拝堂のイメ−ジにした。そこに彫刻家による
巨大な手の彫刻を採用した。手は左右二本あり仏像と同じく左手は前方に手のひらを前に
向けて壁から突き出され、右手は水平にして床に置かれている。この右手は息を引き取った
老人が、このホ−ムで最後の夜を過ごす為のベットなのである。そして、大いなる者の右手
に抱かれて、左手によって天界に導かれる構図が完成する。この霊安室の「配慮」は、老人
たちにも好評だ。ここで最後が過ごせるならと、わざわざ遠方から、入所の希望を伝えにくる
老婦人まで現れたそうだ。それは梵と仲間の工人集団の創作が、単に奇をてらったもので
はなく、一般の人たちに広く受け入れられる素地を持っていることの、何よりの証明といって
よいだろう。

無量寿(霊安室)
無量寿とは永遠の寿、つまりは
限りない命の祝福という意味で
あり、無量寿のイメージが建物
全体のデザインに反映されてい
ます。
 
−月刊・ステンドグラスア−トより−
この老人ホームは、一見ガウディ風の面白い建物として
注目を集めている。ありとあらゆる空間を、個性的なア
ーティスト達が埋め尽くしたという感じだが、それでいて
嫌みがないのが不思議なくらい、居心地が良い。設計は
ポストモダニズムに背を向けて、ユニークな建物を作る
異色の建築家、梵寿綱で、装飾は梵寿綱と仲間たちの
手になるものである。彼らは、「文化的技芸を伝承し、語
り伝える語り部でありたいと願う工人集団」を自任してい
る。